想望手記

近代詩の朗読と詩の解説。中原中也さん等。

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あどけない話 - 高村光太郎|詩の朗読

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 高村光太郎さんの"あどけない話"を朗読しました。こちらは智恵子抄の中でも、特に印象深い詩です。絶対的な愛というのは、時代を問わず、存在するものだと私は思っています。光太郎さんの悲しみや戸惑い、智恵子さんの天使のようなあどけなさも、その一切は、悠久に色褪せることはないのでしょう。

 「東京には空がないの」と呟いた智恵子さんは、阿多多羅山(安達太良山)のある郷里の空を見上げていました。それに気づいた光太郎さんは、同じ空を見ていないことに驚きました。光太郎さんはきっと、胸が押し潰されるような気持ちで、智恵子さんと同じ空を見ていたのだと思います。

 

 この度の朗読は、いつになく緊張しました。マイクに向かって朗読し始めたのは良いものの、どうにも声が震えてしまって、なかなか上手くいきませんでした。想いを込めて大切に朗読しました。お伝えできれば幸いです。最後まで読んでくれてありがとうございました。それでは又。

 

あどけないはなし

 

智恵子ちえこ東京とうきょうそらいといふ、

ほんとのそらたいといふ。

わたしおどろいてそらる。

桜若葉さくらわかばあいだるのは、

つてもれない

むかしなじみのきれいなそらだ。

どんよりけむる地平ちへいのぼかしは

うすももいろあさのしめりだ。

智恵子ちえことおくをながらふ。

阿多多羅山あたたらやまやまうえ

毎日まいにちてゐるあおそら

智恵子ちえこのほんとのそらだといふ。

あどけないそらはなしである。

 

智恵子抄ちえこしょうより