想望手記

近代詩の朗読と詩の解説。中原中也さん等。

想望手記

朝の歌 - 中原中也|詩の解説

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 中原中也さんの有名詩、"朝の歌"を朗読しました。この作品は、山羊の歌に納められた詩の一編であり、たった十四行を書くのにこれほどの手数がかかるものなのかと、自分自身でがっかりとされている様子が『詩的履歴書』に書かれていました。その中で、方針立つとも書かれているので、中也さんはきっと確信と自信をもって、この作品を小林秀雄さんに読んでもらったのだと思いました。

 

 主題は、喪失です。私は一人で在りました。朝を知らせてくれる人もいなければ、小言をいうものもおらず、誰も私を諌めたりはしないようです。それでも世界は動くことを怠らず、私は過ぎていく時間をただ見つめるばかりでした。そうして失ったさまざまなゆめが、うつくしき夢となるのを待っているのです。と、私は読み解きました。

 何より、この朝の歌には喪失だけではなく、希望が込められています。全てを失った先の未来を暗示しています。詩人として生きたいからこそ、このような状態であっても、私は詩を書くのだという想いが強く描かれているこの作品は、中也さんの残した詩の中でも特別であり、夭折の天才詩人、中原中也の代表作と言えるでしょう。

 

 私は中也さんの詩の中でも、朝の歌が特に好きです。いえ、ただの好きとは少し違う気がします。その少しが何とも言い表せなくてもどかしいのですが、朗読していると透明な腕の中にいるようで、心穏やかな気分になれるのです。だから私は、何度も言葉を追いかけます。私が中也さんを想うように、中也さんの詩も誰かを想い続けているのでしょう。

 詩というのは、感じたままを素直に受け取るのが一番良いと思います。正しい読み解きなんて存在しません。人それぞれです。逆にこれが正しいのだと言われると、私は途端に苦しくなってしまいます。だから私は感じるがままに、中也さんの世界に浸かっています。

 

 最後まで読んでくれてありがとうございました。心を込めて朗読しました。良ければきいてください。それでは又。

 

朝(あさ)の歌(うた)

天井(てんじょう)に 朱(あか)きいろいで
  戸(と)の隙(すき)を 洩(も)れ入(い)る光(ひかり)、
鄙(ひな)びたる 軍楽(ぐんがく)の憶(おも)ひ
  手(て)にてなす なにごともなし。

小鳥(ことり)らの うたはきこえず
  空(そら)は今日(きょう) はなだ色(いろ)らし、
倦(う)んじてし 人(ひと)のこころを
  諫(いさ)めする なにものもなし。

樹脂(じゅし)の香(か)に 朝(あさ)は悩(なや)まし
  うしなひし さまざまのゆめ、
森竝(もりなみ)は 風(かぜ)に鳴(な)るかな

ひろごりて たひらかの空(そら)、
  土手(どて)づたひ きえてゆくかな
うつくしき さまざまの夢(ゆめ)。

 

山羊(やぎ)の歌(うた)より